以前は、健康だけが取りえと思っていた私だが、身体のあちこちから注意信号が発信され始めて久しい。まず膝が痛みだしたり、疲れが次の日に持ち越すといったようなことがはじまってきた。そのころは、トシを考えるとこんなものだろうという思いもあって、それほど気にすることもなく、まだ10年は何とか好きなことが続けられるだろうというのがホンネだった。
でも、これからの10年が、心がけ次第ということだろうという思いもあって、健康には気をつけて、いや、健康だけではなく、心を枯れさしてはならないぞ、と言い聞かせながら、お金にはならない、ま、ボランティア的なことを、けっこう身に余るほどの仕事を引き受けてきた。演劇という新しいことにも挑戦してきた。ただ、嫌いなことや、気分ののらないことには、手は出さなかった。
あの頃から10年後、80歳を迎えた頃も、口では、トシ寄ってもうあかん、などと言いながらも、「おっ、案外達者にやってきたなあ」と、内心は思っていた。(口で言うほどのことは出来ていないのだが……)
ところが、80代半ばに差し掛かる頃からは、まるで幼児が成長していくカーブのように、どんどんと体力が落ちてきた。年齢は正直やなあ……と実感している。何をしても、はかどらない。首から上も、おぼつかない。物忘れはするし、漢字は忘れるし、物探しが多くなってくる。忘れた漢字や名前等は、なるべく思い出そうと考えることにしているのだが、まさに時間の無駄遣い。自分ながらうんざりさせられる。
話をしていても、同じことを以前言ったのに、憶えていない時もある。「前にも言ったと思うけど」ということばをつけてから言い出さないと不安になることもある。
ま、潮流に逆らって泳ぐようなものなのでしかたがないのだが、健やかに、無駄なく一生を使いきることは、無理なことなのだ。
といっても、やはり一日でも長く自立していこうと思うので、努力は続けたい。努力によっては、マシになることもある。膝や腰の痛みは、TVで教えてもらった体操やストレッチでかなりよくなっている。何事も、今からでは遅過ぎる、ということはないという。無理なく楽しみながらやっていけたらと思う。