2020年3月19日木曜日

№1284 障碍者


  長い教員生活の殆どを障碍者の教育に当たってきました。障碍の無い子供の教育も、初めの4年間は経験しているのですが、やりがいのあったのは、やはり障碍者教育だったように思います。難しい教育でした。何も分からないのに飛び込んで、失敗もありましたが、否応なく、いろいろと勉強せざるをえなかったのは、ありがたいことだったと思っています。

 今日TVで、出産前検査で、産む産まないの選択ということで放送されていました。そういう時代になっているのは当然だろうと思います。それを見ながら、ある日の教室の一場面を思い出しました。盲学校の中学部の特殊学級を受け持っていた時のこと。夏休みが終わってのある日のことでした。

「夏休の思い出で、どんなこと、心に残っているかしら」

A「ぼくはなあ、母ちゃん泣かしてしもたことやなあ」

「ありゃりゃ、お母さん泣かしたん? どうしたん?」

A「ぼくがな、こんなぼくでも、産んでくれて嬉しい言うたらお母さんがおいおい泣きだしたんよ」

……私も泣きだしてしまったのです。これでは授業にならんと思いながらも、涙がとまらなかったのです。

B「こら、Aよ、先生も泣かしたらあかんやないか。あかんやないか」
 泣き虫の私は、Aのお母さんの気持ちが胸いっぱいに広がってしまったのです。

 Aが、生まれてきて良かったと心から思っていることが、とても嬉しかったです。お母様きっと、嬉し涙と、障碍者に産んでごめんなさいの気持ちとが、泣かずにはおれなかったのでしょう。

今は亡き、A君のご冥福を祈っています。

 

2 件のコメント:

  1. こんにちは
    めったに書き込みしませんが、今日のは泣かされました

    今朝のテレビに、マラソン解説者の増田明美さんが出てました。
    オリンピックで途中棄権して帰国した成田空港で「非国民」と言われたそうです。その後の、大阪国際女子マラソンでは沿道から「増田、お前の時代は終わったんや」と言われました。ひどいことを言う人がいるもんですね
    言葉は人を救うことも凶器になることもありますね

    返信削除
    返信
    1. bagusさん、お変わりなくてなによりです。ほんとに心ない方がおりますね。コトバは両刃、愛のないことばに傷つくことはよくあることですね。
      愛情があれば、「ばかやろう」も有難いことばになるのですもの。

      削除