2015年11月9日月曜日

№994 迷い


  長年生きてきたオトナは、たくさんの情報や知識で、常識や理性を身につけてきました。そして、ちょっとやそっとのことで驚きも感動もしなくなってしまいました。秋が来て、山々が眩しく赤色に染まるのを観ても、美しいとは思っても不思議とは思わないし、赤トンボがすいすいと空を泳いでも、追い掛けようともしません。

 しかし、子どもたちは、そうではありません。蝶を本気で追い掛け、蝶を相手にとび跳ねるし、逃げるのが速いと驚きます。幼かった孫たちは、「ちょうちょってお外がすきなのねえ。どうしてお家の中で遊ばないのかしら?」 と首を傾げました。
 こういうことを、オトナが本気で言うには、かなり勇気のいることで、いや、そういう感覚は、もう持ち合わせてはおりません。

 何か書きたくて座っても、ただいらいらするだけのときがあります。そんなとき、私はふっと出かけたくなりますが、最近はほとんど出掛けることはありません。テレビをつけて、旅番組や、自然の風景などの番組を観ています。大自然や、白壁の蔵の軒下にぶら下がる吊し柿、静かな川面にうかぶさざ波、八の字の小波を描いて滑る小舟、そんな何の変哲もないものに目をあずけていますと、ありふれた言い方ですが、私の心に、ほっとする暖かいものが流れ込んできます。
  畑で採れたもぎたてのトマト、ちょっと曲がった新鮮な胡瓜などを頂くことがあります。そんな新鮮さと硬さが、また違った気を吹き込んでくれることもあります。贅沢な遊びでは得られない気分でしょうか。

  文芸というものに関わっているオトナは、子どもの感性を持ち合わせていることが大切といわれますが、凡人はこんな宝ものと、いつまでも縁があるはずもなく、持ちえません。しかし、何とか文章を作るときだけでも、その目や耳の曇りを拭き取りたいと焦っても、なかなか濁りまでをもとり去ることは難しいものです。

  感性も驚きの情感も常識の罠からはみ出せないままで、つまらぬものにおわってしまうことの多い日常の中にでも、せめて常識、陳腐、手垢まみれ、といったものから洗い清められたいものですが、トシのせいにはしたくはありませんが、やはりトシのせいでしょう。難しく考えることよりも、何事もさらりと流すことがなりわいとなってしまいました。軽く、流れの上澄みを掬うというような、高級な軽味ではありませんから、あまり褒めたものではありません。

  このブログを始めたときは、多少は、そうした気持ちも強かったのですが、1000回も近づいてきますと、【あのことは、もう書いた】【あの思い出は書いたかな】というような悩みも増えてきました。そうしたことを調べるのも、大変なんです。(これは、題の付け方が不味かったためもあります)

  初心を忘れたわけではないだけに、悩みます。そろそろ、お仕舞いにするべきではなかろうかと。これは、自分自身のことでありますから、自分で解決するつもりですが、じっくりと迷って考えたいと思っております。




4 件のコメント:

  1. ごまめさん わたしとしましては、ごまめさんの話を何度でも聞きたいですから、同じ文でも何度でも読みたいのです。 
    北海道のことや、教師時代のこと、また亡くなったご主人のこと、同じものを取り上げた文でも、そこにはその時だけのまた違った趣が感じられるのです。
    どうぞ気の向くままに、のたりのたりとお書きください。
    そこには何時も、ごまめさんの息吹が感じられるのですから。

    常識と言う名を持つ、日常の付き合いの中でしか毎日を過ごせない仕事人間より ^^

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    1. kogaさんのようにおっしゃってくださるのは、とても有難いことです。感謝しています。同じことを書いても、前より不味い文章じゃあねえ。(笑)
      ま、よく考えます。

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  2. 1000回凄いですねぇ。優に単行本2冊にはなるでしょうか。毎日素材を見つけて何か書く。それは大変な作業でしょう。よく続けてこられたと感心します。

    ごまめさんはやっぱり書かなければいけないと私は思いますよ。素材が重なってもそれを書くごまめさんの方が変わっています。今日のごまめさんと1年前のごまめさんは違うはず。同じ内容であるはずがないと思います。昨日のトンボは今日のトンボに非ずです。

    正直言いますとね、ごまめさんの文章が無くなると読ませて頂いている私たちが寂しいの。唯で読ませてもらって勝手な言い分ですけどね。

    でも体調は大切。これはご本人にしか分からないので、読者が強要する訳にはいきません。私の希望をお伝えしたかっただけです。

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    1. >今日のごまめさんと1年前のごまめさんは違うはず。同じ内容であるはずがないと思います。
      たしかにちがっています。ボケていきよります。(笑)
      読んで下さる方がいる、ということは、有難いことですが、ま、よく考えます。ありがとうございます。

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