2016年11月19日土曜日

№1103 白川郷


  新日本風土記というTV番組で、【白川郷】が再放送されるのを知り観た。もう20何年も前になるが、退職後、車で女学校時代の今は亡き親友の住んでいた高崎に会いに行ったことがある。その帰り路、秘境白川郷に立ち寄ったので、とても懐かしい思いで目を凝らしてみていたのだが、偶然にも、私の泊った宿が出てきた。合掌造りの民宿で、当時と同じ看板が掛っていた。それを見ていたら、走馬灯のように、その夜のことを思い出した。

私の訪れたのは、七月の初めだったが、陽射しはかなり厳しかったが、家の中は涼しく、通された部屋は、クーラーも扇風機もなかったが、外気とは比べものにならぬほど涼しかった。泊り客は、数人だったが、一坪ほどの囲炉裏には薪がくべられていて、それを囲んでの夕食。4人程は、仕事仲間らしく、商売の話に余念がなかったが、残ったもう一人の男の客は、ぽつりぽつりと私に話かけてきて、ビールの勢いもあってか、「いやあ、さっき、徳島ナンバーの車が入ってきたので、感心したんですよ」なんて言っているうちに、身の上話まではじめた。「白川郷は3度目で、いつも家族に黙って家出してくるんですよ」なんて、面白そうに話してくれる。家出は10日ほどらしいが、それにしても、家族の身になれば心配だろう。「言えば止められるか、連れていってくれと言われますからねえ。それに発作的に飛び出すんです」と。何となく、ストレスのたまるお仕事らしく、もうこの10年で5回も家出旅をしていると言うのだから、結構な御身分らしいが、ご本人は、めちゃくちゃ働いてきたと。しかも家出がなければ生きてはおれないなんておっしゃる。「ま、2年に一度くらいの家出で死なずにすむのなら、奥様も許さねばしかたないでしょうね」と笑ったが、人生はいろいろだ。つかの間とはいえ、家や仕事を忘れて、自然の中に自分を溶け込ませ、打ち直されてまたふっくらとなって仕事に励む、一夜のすれ違いの旅人と人生を語り合う……なんて、ま、男のロマンかもしれない。
意地悪く「奥さんの家出も認めてあげるんでしょ」と言うと、「あいつは楽天家だから、悩みなんてないですよ。悩みより寝るほうです」 いつのまにか、家内、妻が、【あいつ】に格下げになってしまったが、何となく、ほほえましいご夫婦像が目にうかんだのを思い出す。

 

4 件のコメント:

  1. 白川郷、行ってみたいとこでした。過去形です。写真で見ただけでロマンを感じるところですよね。そんなところへ旅して、未知の人と身の上話をするなんていいですねえ。

    私にはもう望めないことですが・・・

    返信削除
    返信
    1. 白川郷は、何度訪れてもいいところでしょうね。木曽路もいいところで2度いきましたが、白川郷は1度だけ。もう行く機会はないでしょうが。

      削除
  2. わたしのように毎日ダラダラと仕事をして、週一位運転して出かけていますと、特に旅をしたいとは思いません。休みの時は家に居て、良い映画でも見ていたいような心境になります。若い頃は家族旅行をしていましたが、現在は仕事以外で運転して出かけるのは、1月2日に弟の墓参りをして、弟の家に寄ることくらいです。それも今年は、風邪のためにできませんでしたが。
    旅の思い出というものも特にありませんが、子供が小さかった頃はやはり楽しかったです。寝台車で出かけたり、真夏にクーラーの無い車で出かけたり、思い出すと笑いが出てきます(^^)

    返信削除
    返信
    1. 気持ちはわかります。タクシーの運転手の方が、言ってました。旅行に行きたいというより、家でのんびりしていたいって。
      私はまだ机の前で忙しくしていると、車でドライブしたくなるほうですね。

      削除