2014年10月23日木曜日

林檎の悲しみ


札幌に住む親友Mちゃんから、美味しい林檎が送られてきた。【早生ふじ】という大きな林檎で、真っ赤ないい色つや。ちょっと硬めで、ちょっと酸っぱくて、とても林檎らしい懐かしい味である。さっそくお礼の電話をする。

暫く話して「じゃあまたね」と言うと「私ね、古女ちゃんに隠しごとしたるんだよ」と言う。一瞬ビクリとした。何か悪い病気にでも……と思った。「主人がね、3か月ほど前に、急に倒れて亡くなったんだよ」と言うなりMちゃんは大声で泣きだした。「えーっ、ウソだろう?」とさけぶなり、私もMちゃんといっしょに泣きだした。夫婦仲が良くて、ひとの羨む幸せな生活をおくっていたのだ。Mちゃんが、とてもとても優しくて、いい奥様だったし、旦那様がまたとっても優しくて、ほんとに似合いのご夫婦だったのだ。Mちゃんの悲しみは、手にとるように分かるだけに、泣けてくるのだ。「古女ちゃんに、だまっているのがとても辛かったけど、言ったら古女ちゃんを悲しませると思ってね。でも、言って気持ちが落ち着いたわ」と。

どこまでもやさしいMちゃんなのか。今も思い出しては泣いているMちゃんだが、泣きたい時は、泣いたのがいいんだよと言いながら、私も電話を切ってからも何度となく涙を拭いた。

いつかはどちらかが、独りになる悲しみを味わうことになるのだが、あっという間に亡くなるというのは、本人は楽にあの世に逝くことができるけれど、あとに残るものにとっては、たまらない。せめて悔いのない看病をしてあげたかったと思うのだ。

ピンピンコロリという逝き方は、周りの者には、つらいことだ。長生きして、ちょっとばかり、迷惑かけてから、逝くのがいいのかもしれない。

しばらくは、林檎を頂く度に、Mちゃんの悲しみを思うだろう。

2 件のコメント:

  1. お友達の悲しみ分かります。お気の毒。私の友達にもここ1,2年何人かご主人を亡くした方がいます。急だった方もあれば何年か介護をされてご自分が疲れ果てた末と言う方もいらっしゃいます。

    相手が落ち込んでいる時、慰めの言葉は無効ですね。時が癒してくれるまで待つより仕方ないですが、本人から直接知らされた時はかける言葉がなくてこちらも泣きたくなります。

    ピンコロりはあつけないですが、老老介護も見ているのが辛いくらい大変ですからねえ。
    それと、高齢になって一人取り残されるのは不安でしょう。ずっと奥様で来た方ほどショックは大きいみたいです。

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    1. Mちゃんとは、小さい時からの仲良しなので、性格もよく分かっているものですから、どんなに悲しんでるかと思うとね。いい奥さんだっただけに、心配です。

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