2016年1月21日木曜日

№1018 奥底の悲しみ


 先日116日に、日本放送文化大賞グランプリ受賞した【奥底の悲しみ・戦後70年の記憶】が放映されました。私は録画をしてあったので、今日、それを観ました。「戦いに負けるということは、こんな酷い目に合わなくてはならなかったのか」と、涙を流しながら観ました。
 引き上げ者の方々のご苦労は、よく聞いておりました。着の身着のまま、財産も捨てて、命からがら引き上げてきたご苦労は、「ずいぶん大変なことだったろうなあ」と、思っておりました。しかしこの記録は、今までだれも語ってこなかったものでした。それは、ソ連兵による婦女子の略奪、暴行、強姦、それも、家族の目のまえで、銃を突きつけられて、妻や娘が何人もの兵に強姦されたり、連れて行かれたりしたことを、かつて子どもだった老人が語っていました。ある時は、45人もの女を出せと言われ、銃で殺されるよりは、まだ生きて帰されるだろうと、泣く泣く妻や娘を差し出すと、足りないと言われ、70人もの婦女子を差し出したりしているのです。抵抗して殺されたり、また、そうした辱めにあった女性が自殺したり、見ていて涙が流れました。ソ連兵の野獣よりもおとましい仕打ちに腹わたが煮えくりかえる思いでした。

引き上げ船では、婦人の中で、体の異常があるものは、下船後、すぐにその場に設けてある婦人相談所に駆け込むようにと、船中でビラがくばられていたのですが、投身自殺をした女性もいたようです。
相談所には、医者と看護婦が待ち構えていて、堕胎をしたり、性病の手当てをしたりして、何とか故郷へ帰れる身体にして帰したというのです。麻酔もせずに、9か月にもなる胎児を堕胎したりすると、胎児が泣き声を挙げるので、母親に聞かせないよう、水に直ぐ沈めて殺したりしたそうです。そんな苦しみにも母親は、皆声も立てず、歯を食いしばっていたといいます。

ソ連と言う国のやることには、ずいぶん腹立たしいことがありましたが、今回ほど憎く思ったことは有りません。母が眼の前で強姦され、引き上げ中に栄養不良で亡くなったという老人は、『私ら子どもや夫が殺されないために、身を投げ出した母が、子に食べさすため、自分は栄養失調になり、引き上げ途中で死んだのです。母の最期の姿ばかりを思い出します』と、涙しておりました。

戦に負けるとは、こういうことなのでしょうか。それにしても、あまりにもひどいソ連。日本は、そうしたソ連、ロシアには、何の文句も言えないのでしょうか。戦後70年という歳月は、あまりにも長すぎるのでしょうか。せめてこうした作品を、日本だけではなく、ロシア国家も、見ていることを願うものです。

4 件のコメント:

  1. 人間とは、弱い動物ですねぇ。 置かれた環境によっては獣にも成れるし、獣以下にも成れるのですよね。 わたしが就職した頃は、先輩達の内、38歳以上の人達は、ほとんどが兵隊に取られた経験の在る人達で、当直の夜など随分いろんな話を聞かされたものでした。
    関東軍に長く所属していた人は、慰安婦の話もしましたし、刀で人の首を切った事も、生々しく話したものでした。 また別の人からは、ごまめさんの書かれている事実や、それ以上の此処では書かれないような事を聞いたこともありました。
    そんな話を聞きながら思いましたのは、人間は、どこまで残虐な行為が出来るのだろうか、と言う事でした。 平和な時代には全く考えられないことを、数年の環境変化で、血眼になって行うことが出来る人間。
    当時のソ連軍の残虐行為は、規模の大小は有るものの、世界中どこの軍隊ででも行われたことなんですね。 現在も世界の何処かで行われていることでしょう。
    わたしは子供の教育の中に、そんな人間の一面が有ることを、しっかり教えるべきだと思うのです。 惨い写真を見せる、とか言うことでは無く、人は集団の中では、悪の道の方にも簡単に流されてしまうんだと言う事をね。

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    1. おっしゃる通り、集団心理というか、戦争のような場合は、酷いこともできるのが人間かもしれません。でも、ソ連軍の場合は、あまりにも大がかりで酷いです。人数からいってもです。
      日本人の場合は、戦争に関わっていない人たちを酷い目に遭わすことは出来ない人間も大勢いいましたからね。

      おっしゃるように、人は集団の中では、悪の道の方にも簡単に流されてしまうんだと言う事を、しっかり教育するべきですね。

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  2. そういう話は私たちの世代はいやというほど聞かされました。戦争とは殺すか殺されるかの世界ですからね。敵国の人は非戦闘員であろうとなかろうと斟酌されませんでした。ソ連のやったことはひどいと思いますが、アメリカさんだって原爆落としたり、絨毯爆撃をしたり機銃掃射をしたり、何十万の一般人がひどい殺され方をしていますよ。日本軍が外地で何をしたか私たちは知らされていませんので知らないのですが、まあ戦争とはそういうものです。

    負ければおしまい。勝てば官軍です。

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    1. 私もイヤという程聞かされてきましたけどねえ。ま、戦争は、勝っても負けてもするべきではありませんね。

      戦争を知らない人たちばかりが、政治家になっていますから、どうなることか。

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