2015年7月19日日曜日

№952 月光の夏


 7月に入ってからは、土曜日ごとに、七日法事に出かけている。近しい身内が亡くなったので、四十九日までそうしたことが続く。昨日も、そちらに行ったものだから、予定していた市民劇場のお芝居が徳島では観ることができず、今日、鳴門のほうで観てきた。いつもの会場でない鳴門に出かけるのは大そうだったのだが、行ってよかった。

〝月光の夏〟という朗読劇だが、これは、特攻隊で命を落とす若きピアニスト志望の青年が、出陣前にぜひ、最後に思いっきりピアノを弾いて死んでいきたい、という願いをこめて、ベートーベンのピアノソナタ【月光】を弾き、沖縄の空に出撃し消えて行ったという実話をもとにした物語である。ピアノも実にすばらしかったので、感動して泣いてしまった。

 特攻隊という、爆弾と飛行機と共に体当たりするという実に酷いことをさせた軍隊、そうした役目を「愛する家族や国のために」やりとげなければならなかった若人たち。何ともいえぬ思いである。
 実際にそうした若人たちを、見送ってきた経験を持つ私たち年代のものは、もう数少なくなってきた。特攻隊ではないが、父を戦場に送りだしたときの思いは、母の泣き崩れる姿とともに、忘れられない。

 父は運よく帰還したが、戦地でのことは、ほとんど聞いていない。しゃべりたくなかったのだろう、人殺しをしてきたのだから。

 人間を狂わせる戦争、人々の幸せを踏みにじる戦争。戦争体験者は、どんなことがあっても、子や孫たちを戦争に巻き込むことだけは、できないという思いは、骨の髄まで沁み込んでいる。

1 件のコメント:

  1. お葬式のあと7日目ごとに仏事をするようになったのは、戦後ですね。高度成長期かなあ。それまでは49日だったんですよ。

    極限の体験は人に喋れないものです。私も大阪大空襲の時、大阪大学病院にいて、目にした事は今まで誰にも話していません。話せないのです。そのうちに記憶がだんだん朧になって来て、正確な事は分らなくなります。もともとあの時見た物は、本当の事かどうか、よく分からないんですよ。

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