2015年3月27日金曜日

№906 Sさん


Sさんの携帯に電話をしようと思ったら、電話番号が消えてなくなっている。不思議に思って、固定電話にかけたところ、もう、必要もないと思って止めたと言う。相手が取り止めたら、こちらの電話帳も勝手に消えるらしい。

Sさんは、以前、携帯電話なら、いつでもすぐに出られるから、携帯はいいなあと言っていたのに……。

私が電話をしたのは、日曜日予定の、女学校同窓のクラス会に出席予定だったけれど、やはり止めますという留守電をいただいていたからだ。Sさんは、身体は別に悪くはないのだが、気持ちが後ろ向きで、悲観的なのだ。クラス会に出て、皆さんとおしゃべりして元気もらいたかったのだが、やはり気が進まないとおっしゃる。生きる張り合いがないようなことも言う。家族に、自動車の運転は禁止されたし、携帯電話は、不要と取り上げられたので、手足をもがれたようなものだと、家族のことを恨んでいるような口ぶりだ。

長い間息子夫婦の手伝い(農業)をしていたのだが、もう手伝いも出来んので、草取りくらいしかしていないとか。私に言わせれば、草取りは、立派な仕事なんだから、まだあんたは現役じゃないの、と言うのだが、もう役立たずだと言う。何か、生きる張り合いを失ったようなSさんの話しぶりを聴きながら、昔、机を並べて仲良しだっただけに、とても悲しかった。

何となく、家族も、Sさんのことを心配してのことだろうが、反って老化をすすめるような対応をしているように思えてならない。車もまだ乗りたいし、乗れるのに、もう運転は止めろと言ったり、仕事はもうせんでええと言うらしい。ボケるほかないわ、なんてコトバを口にする。息子夫婦と3人で暮らしていても、孤独なのだ。

日を追って暖かくなっていき、もうすぐ桜の開花も近いらしい。冬は枯れ木のようだった桜も、春には花を咲かす。人間は、そうはいかない。早かれ遅かれ枯れていく。いくら健康管理なんて言っても、不満の家の中に閉じこもってばかりいては、身はもたない。老化を加速するばかりだろう。Sさんには、まだまだ畑仕事をして、おしゃべりもしてもらいたい。近いうちに、会いに行きたいものだ。

2 件のコメント:

  1. 桜咲きましたね。春です。車運転していた人は、免許証が無くなるとかなりショックみたいですね。家族が取り上げないとなかなか本人は手放せません。事故が起こってからでは遅いですからねぇ。

    草取りにしても家族が「止めて」と言うなら理由があるのだと思います。私の母も百歳近くなっても草取りをしていましたが孫嫁が言うには「種をまいてやっと芽生えて来たと思ったら草と間違えて抜かれてしまう」と。草取りは年寄の楽しみの一つでしたが、「もうやめた方がいいよ」と言わざるをえませんでした。視力が落ちてくるのも原因です。別に認知症と言う訳ではありませんでした。Sさんも何か携帯で失敗したんじゃないかしら・・・何しても若い時のようにいきませんのでね。仕方ないですー。

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    1. Sさんの家の事情は、よくしりませんが、多分、孤独なんでしょうね。しっかり者なんですが、それだけに老人扱いされて、寂しさもあって……。
      車も、事故を起したことも無いのにと、言ってましたし、夫婦が夜、遊びに、出掛けても、声もかけてくれないとか言ってましたからねぇ。

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