2014年2月24日月曜日

ある会話


「もしもしAちゃん?古女です。ご無沙汰してましたがお元気?」

「まあ、お久しぶり。何とか生きとるよ。でも、もうボケよるわ。どこにも行かんと家におるけん、あかんわ」

「この前から、携帯かけても、かからなかったわ。電話も留守みたいやったし。旅行してるのかと思った」

「ああ、携帯はもう使ってない。電話は、庭の草でもしよったんやろなあ」

「車、まだ乗ってるんでしょ?」

「息子が、もう乗るなって言うけん、近くだけ買い物に行くだけやもんな」

「車は、まだしばらく乗ろうよ。徳島くらいまでなら乗れるやろ?」

「乗れるけど、怒るけんなあ。もう、しんどいわ。ボケるしかないよ。家の中ばっかりおったら。車は乗るな言うくせに、私を載せてくれるんならええけど、どこも連れて行ってくれんしなあ」

3月末に、クラス会するから、行こうよね」

「もうクラス会に出ていく気もなくなったわ。皺苦茶になったもんなあ。恥ずかしいわ。一年たったら格別皺が増えたわ」

「そらそうや。これからは1年どころか、ひと月ごとに、顔は皺が増えるよ。皺は勲章や思うことにしようよ。皺苦茶になっとる婆さんの集まりやもん、何が恥ずかしい?皆同じやないの。Aちゃんなんか、まだ畑してるんやろ?」

「もう草取りくらいか出来んけどな」

「私なんか、草取りも出来んわよ腰が痛くなって。Aちゃんは、まだ現役やもんなあ。感心やわ。今から出無精になったらあかんわ。皆と昔話して笑おうよ。元気もらおうよ」

「田んぼしよる者は、皆の話についていけん。ほんまの田舎者やけんな」

「一昨年のクラス会のとき、隣にいたBちゃんが私にささやいたんよ。『Aちゃんは、畑仕事してるって言うけど、色は白いし、美人やし、着てる服はモダンやし、都会の奥さんみたいやな』って感心してたよ。私もそう思っていたから、同感同感って言ったんよ。それに田舎者も都会者もあるかいな。クラス会は、そんな垣根とっぱらって、わいわい騒ぐやないの」

「ほら古女さんには会いたいよ。仲良しだったもんなあ」

「私だってAちゃんが来ないクラス会は、おもしろくないよ。ぜひぜひ来てね。はがき3月に入ったら送るからね」

「ま、行けたら行くわ。ちょっと元気になれるやろかなあ」

「ぜひぜひ、行こうね。約束してね」……略

2 件のコメント:

  1. 臨場感満点。電話をかけているごまめさんの表情も受けるAさんの仕草も完璧に伝わります。

    こういう会話はもう市井に溢れているでしょうね。車を禁止した家族の気持ちも困惑しているAさんの気持ちもよーく分かります。こう言う場面は何時か通り抜けなければ人生終わらないのよね。

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    1. そういうことですねえ。年寄りも、気持ちの切り替えができないと、不満は膨れるばかりでしょうね。

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