2012年4月17日火曜日

春のブラウス

ある大型店舗の衣料品店ウインドー前に立ち止まった。あれ、いいなあ……と思うブラウスが、マネキン人形に着せられている。

まだぐずぐずと居残っている冷たい春を追い立ててくれるようなブラウスだ。
そろそろ暖かくなるのだが、さて今年の春着は去年のままでいいかしら、と思っていた矢先のことなので近寄って行った。

何しろ、バストだけは肉体女優なみ。背丈に手足の長さは今や小学生なみという私だ。たかがブラウス1枚に、やれ袖丈を詰めろ、やれ着丈が長すぎる、胸幅がどうのこうのというのも面倒なものだから、寸も柄もぴったりということになると、半日仕事である。

私のようなあまり格好のよくない婆さん体型は、箒で掃いて捨てるほどいる、と思うのだが、いざ探してみると、帯に短し襷に長しで、数に限られてしまうから、不思議である。

「これなら、少々お代を払って手直ししてもいいかな」
そのときはそう思った。といっても、決め手は財布である。給料もボーナスもご縁のない〝年金ひぐらし〟の身であるから、ブラウス1枚といえども、身分不相応な代物には迂闊に手を出すわけにはいかない。

更に距離を詰めてそっと値札を覗き込んだ。やはり値札は裏返しになっていた。
故意にそうしてあるのだろう。ウインドーの中の服は、高価なものが多くて、大抵は値札が裏返してある。
私は単細胞なので、裏返った値札を見ると、「高価なんだな」と想像してしまう。
値を見て引き返す客を引き留めるための裏返し、と思っているからだ。

本来なら、店の中に入って「あのブラウス、ちょっと見せてくださいますか?」と、手にとって見せてもらえばいいのだが、私はそそくさとその前を立ち去ってしまった。万一、店内に入って、店員さんが、マネキンからブラウスを外して着せられたり勧められたりしたら、そのまま踵を返して帰る勇気がなく、気に染まぬものでも買ってしまうことになるので、君子危うきに近寄らず、ということになる。

今年の春は、ブラウスの一枚も買わずに終わるかな? ちょっと淋しい気もする。「お洒落を忘れちゃいけないよ」そんな声が耳元で囁く。
ひょっとして、また、覗きに行くかもしれないなあ……。(笑)

2 件のコメント:

  1. ごまめさん、お気持ちよく分かります。年寄向きの寸法って、本当にないですね。背丈は縮む。お腹は無限大に大きくなる。窮屈は嫌い。朝晩の着替えもヨッコラショ。

    年寄向きの寸法やデザインの服を見つけたら、私ももしかして買うかも知れないのに・・・・

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    1. ほんとに気持ち良く着れる福があったら、同じもの2着買いたい気分になります。買わないけど。(笑)

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