2012年5月12日土曜日

映画『わが母の記』


昨日、映画「わが母の記」を観に行きました。

この映画は、前宣伝をかなりしていたので、ご存じのお方も多いと思いますが、井上靖の小説『わが母の記・花の下・月の光・雪の面』の三部作を原田眞人監督が映画化したものです。

映画のあらすじは、母親に捨てられたという思いを抱きながら生きてきた伊上洪作(役所広司)が、認知症になっていく老いた母親八重(樹木希林)との隙間を埋めようとする姿を描いた話です。

有名作家という変わった家庭を、リアルに描きながら、親子の感情の移り変わりを細やかに描いていきます。

そして日本独得の季節の移り変わりの美しさなどなど豊かな自然を魅せてくれました。

演ずる役者さんたち。これがまたいい。役所広司は、作家という仕事と、母への複雑な思い、家庭の父親という立場、子どもへの愛情、そうしたものを、見事に演じていました。

母親役の樹木希林は、これまた独得の演技力。
夫の死から、老いてゆく様をリアルに演じます。時には笑いを誘い、ときには涙を誘い、そして鬼気迫る演技もみせてくれました。しかも自然体で……。

子どもの頃、祖母に託されたのは、母に捨てられたと思い続けていたのに、認知症になった母が取りだしたノートの切れ端は、洪作が子どもの頃作った詩。母は、それを肌身離さず持っていて、諳んじる。そんな母を見て、慟哭する息子。息子の顔を忘れるほどに衰えてもなお、忘れられなかった息子の詩。私も涙しました。

役所広司の娘役、宮崎あおいも、なかなかの好演技でした。

 この映画は、日本の家族というものが、親子兄弟姉妹が互いを支えながら暮らしていた時代を描いていて、今の日本では、ちょっと考えられないような美学があります。今なら、差し詰め母親を施設に入れることを相談するでしょう。そうしなければ、生活出来ない仕組みになっています。
それが悪いかよいかは別として、時代の流れは大河と同様、なかなか元にはもどらぬものです。でも、親が子を、子が親を思う気持ちは、昔も今も、変わりはないと思っています。

2 件のコメント:

  1. ごまめさん、いい映画をご覧になってよかったですね。母の思いはいつの世も変わらないでしょうね。子供の思いはどうでしょうか。

    どちらにしても過ぎた月日は戻りませんし・・・家庭のありようは時代に左右されるのかも知れません。子供の幸せは母の幸せである、と言うのは大部分の人にとって本当だと思います。

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    1. mimiさん、昨日、私たちの街に、「一枚のはがき」が上映されました。
      私は以前観たので行きませんでしたが、行った方のはなしでは、入場者が少なかったとか。
      いい映画ですがねえ。皆さん、映画離れしていますね。手近にTVで娯楽映画してますからね。

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