【賞味期限】ということに、ひどく神経質になる方がいらっしゃる。ナマものだけでなく、総ての食品についている賞味期限を、目を皿のようにして睨み、一日たりとも過ぎたものはゴミ箱にポイ捨てだ。
私は反対に、賞味期限などはほとんど気にかけていない。とくに、『明日になると捨てられる運命』にある半額商品には、つい手がのびる。安いということもあるが、そんな商品が可哀想になることもあるのだ。
こんなこともあった。バザーで、安いと思って買った箱入りの上等のお醤油が、いざ使おうと思ってラベルをのぞくと、二年前に賞味期限が切れている。ラベルには、製造会社名と電話番号が書かれてあったので、すぐ会社に、大丈夫か?とたずねたところ、「昔は十年も前のものでも、カビが浮いていても、使っていましたからねえ。規則なので書いてはありますが、ま、外にでも放置してあったなら別ですが、大丈夫と思いますがねえ」と言うお答えを頂いた。
思ったとおりだ。それにしてもいい加減な賞味期限である。
思い出してみると昔は、臭覚、味覚、視覚などを働かせて、「食べられる、食べられない」の判断は容易にしてきたものだ。いや、ちょっとオカシイと思っても、火を通したり、洗いなおして干したりと、工夫しながら、なるべく捨てることのないようにやっていた。
何年か前だが、日本の国の残飯で、世界の飢餓国民の半数以上が救えるということを、どこかで読んだ記憶がある。
そもそも美味しく食べられる期限などという、紛らわしい法律を作って、まだまだ食べられるものを捨てさせるように仕向けたのは、どこかの国の差しがねなのだろうか、などと勘繰りたくもなってくる。
こんなことを言うと、あるお方がおっしゃった。
「パンやソーセージは、賞味期限が過ぎれば捨てられるけど、私の旦那は、賞味期限がとうに切れてますが、捨てたりはしません。大事にしてますから、ま、モノによります」と、けしからぬ発言、いやいや、ご立派なことをおっしゃる。
最近は、賞味期限切れの夫を、同じく似たり寄ったりの妻が、ポイと捨てることも多いらしい。こればかりは、同姓であっても捨てられたお方に同情してしまう。
中には、「どうして?なぜぼくが?」と理由も分からぬままに、慌てふためいていらっしゃる男性もいるらしい。
それに引き換え、老いた連れ合いを見捨てて離婚宣言をする男性は、よほどのお金持ち以外はあまり聞かない。
期限切れで捨てられるハム、退職と同時に離婚宣言される旦那様、どちらにも共通した哀れみが沸いてくる。いや、悲しみと言った方がいいかもしれない。らない。ハムよ、男はんよ、しっかりしなはれ!!と叫びたいのだが、こんなこと叫んだら、瞬く間に吊るし上げられそうで怖くて叫べない。
夫婦というものは、愛がないと、とてもやってられない、という気持ちも分からぬでもないのだが、愛なんて、育てるものだから、ま、愛が育たなかったということは、どちらにも非があったやもしれない。それにしても、老後の夫婦こそ、弱きを助けていくべきじゃないのだろうか……。
賞味期限については全く同感です。いつから人間は食べられるものと食べられないものの判断が出来なくなったんでしょう。私は賞味期限が切れたからって食べられるものを捨てたりしません。
返信削除保存食の代表である梅干しにまで賞味期限があるのは驚くばかりです。
罰があたる」などということばは使いたくないのですが、人の汗で出来た食べ物を粗末にすることが何かの形でしっぺ返しされるときがくると思いますよね。怖いことです。
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