2012年6月5日火曜日

虫歯


昨日は6月4日の虫歯予防デー。

生まれつき歯並びがよくない上に、虫歯の多かった私なので、治療のあとはたくさんあるのですが、ある時期からは、歯をいじることも少なくなっています。それは、あることが、きっかけとなりました。

私が退職する少し前のことでした。

ある土曜日の朝、教頭先生が、「歯の掃除の器具を売りに来るので、放課後、その説明会に出てほしい、器具は買わなくてもいいから」と、職員におっしゃいました。しかも、お弁当10人前を持ってくるので、10人の先生方、ぜひ残ってお願いしますとのこと。引き受けた教頭先生が、だれやかれやに名ざしで頼むのですが、いい顔しない方ばかり。それでも教頭先生のお顔を立てて、しぶしぶ10人が引き受けました。私も年増なので、仕方ありません。

放課後ごそごそと用事を済ませ、遅れて集会室に入って行きますと、すでに9人の先生方が、黙々と、お弁当をいただいていました。私も、黙々と食べ始めました。

若い業者の方は、器具を何台か並べて、皆の食べ終わるのを待っています。
横目で覗きますと、器具は簡単なもので、洗面台の横に、手軽に載せて置けそうなものでした。、

一番乗りの若い方が捕まりました。「すみませんがこのコップの水で、うがいをしてくださいませんか」と、洗面器と、水の入ったコップを手渡します。
あまり格好のよいものではありません。吐き出した水が、どのようなものかは、想像がつきます。
それから説明が始まりました。

歯磨きしても、カスは取れないこと。この器具は、そうしたカスをジェット水流できれいに取り去って、とても爽やかな口になること。虫歯も予防出来ること云々……と。

しかし、値段がちょっと高いため、若い方が買うとは思われませんでした。無くてもすむものだけに……。
案の定、一番手は、説明だけ聞いて、そこそこに立ち去りました。

やややっ、食べ終わった方たちが、次々と、ごちそうさまと言いながら、説明も聞かずに出て行ってしまうではありませんか。
たまに説明を聞いても、「昔から歯だけは丈夫でな」なんて言いながら出て行きます。
残された2,3人は、もう逃げ腰で食べています。業者さんも、たしかに説明が下手でした。

とうとう、だれも買わず、皆出て行ってしまいました。後に残されたのは、まだお弁当を突ついている私ひとりです。

業者さんは、もう諦めたのか、並べた器具を箱に片付けはじめました。

そのとき、思ったのです。ああお気の毒に。10人前のお弁当代は無駄になったのか……。これが私の息子だったら、見ちゃおれんなあ……と。

「あのう、私一つ分けてもらいます。歯にいい道具のようなので」

とっさに声が出てしまいました。
(1台でも売れないよりましだよね)私は心の中でそう思いました。

大事に器具を抱えて帰った私は、歯医者によく行く夫にも使うことを勧めました。ノズルが何本も付いていて、家族で使えるからです。

でも夫は、ちらと見ただけで「わしはそんなものいらん。悪くなったら歯医者で直したらええだけじゃ」とおっしゃって、相手にしてくれませんでした。

職場には、色々な物を売りに来ます。私も色々と買いました。中には、すぐに壊れてしまうようなものや、一度も使うことなくどこかに消えたものもありました。
でも、その中の一番のヒット商品は、このジェット水流の歯の掃除機です。使い出したら止められなくなったのです。

私はあれ以来25年も6年もの間、使い続けています。
いっとき、壊れて使えなくなりました。機械の裏に貼ってあるラベルはもう擦り切れてどこに注文したらよいものかわからず、あれこれ調べて、やっと同じような製品を見つけて今も続けています。何年かに一度、部品の交換もしています。
更に大事をとって、ここ一年前からは、月に一度、歯医者さんに通って、歯垢を取って掃除もしてもらっています。
おかげで、入れ歯はせずに、何でも好きなものが食べられます。これは、多分、あのとき、同情して購入した器具のお蔭と思っています。

あ、ちなみに夫は、60歳前後だったと思いますが、おっしゃるとおり、歯医者に通いながら、総入れ歯になりました。くくくっ。

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