2012年6月28日木曜日

ホームステイ


今年大学生になった孫が、この夏休みに、一ヶ月間、イギリスにホームステイに行くらしい。大学の学校行事として、希望者を連れて行ってくれるらしいので、総て学校まかせ。家族としては、大船に乗った気持ちで、本人が行きたいのならと許可したようだ。百聞は一見にしかず。特に英語の勉強には、いい機会だろう。それでもまだ子ども。今から、途中で帰りたいなどと電話があるのではないかと婆は心配してしまう。


ホームステイといえば、思い出す。

何十年も前の話だが、アメリカの青年クリス君を、一ヵ月余りホームステイしたことがある。彼は高校は卒業した成年だった。

私はまつたく英語がダメなので、夫がそうするといったときも、気がすすまなかったのだが、夫は、英語の勉強ができると、乗り気だった。

いざ、本人が来てみると、私以外の家族は、大いに英語を学んだ様子だった。私も、英語は関係なかったが、色々と面白いことがあって、決して悪いことではなかったと思っている。


夫の英語力もたいしたことがなく、隣に住む息子夫婦に何かと助けられたのだが、こんなこともあった。


たしか私の誕生日の前日だったと思う。夕方、外出先から帰ってきたクリスを捉まえて、夫がおぼつかない英語で何やら話し込んでいたが、私に向かって、
「おい、クリスのヤツ、どうもおまえの誕生日のプレゼントに、花屋から花を贈ってくれるらしいぞ」
といってくれるではないか。私はすっかり恐れ入って、
「へえーっ。さすがアメリカ人だわねえ。なんとお礼を言ったらいいのかしら。サンキューサンキューだけしか言えないわ」
と、恵比寿顔で困っていた。

しかし、心配には及ばなかった。花は、誕生日が過ぎても届きはしなかった。その代わり花屋から、クリス宛ての花の請求書が送られてきた。
みると、アメリカに花を贈った代金である。彼は、自分の彼女のバースデーに代金を後払いにして花を贈った、というわけである。

ま、夫の英語力は、この程度のようだ。

話はまたそれるが、アメリカの男と日本の男、どうしてこうも違うのであろうか。夫には大変申し訳ないのだが、私と夫のその日の朝の会話である。

「明日は私の○回目の誕生日やわぁ……」

「ふーん」(とだけ言って、朝刊より目を離さなかった)

「……」

我が家の味もそっけもない会話である。心を抜きにしてみると、ガキと紳士ほどの違いである。多分クリスは、結婚しても、いや八十歳が来ても彼女に花を贈ることだろう。それはもう、男性の最低の義務と心得ていたようだ。(花を贈ったからといって、二人はうまくいっているとは限らないのだが……)

そんなクリスに感心はしても、決して見習おうとはしなかった夫だが、これは日本の昭和一桁生まれの男の標本であり、我が家の男だけが特別ではない。女の方だって、もうそんなことには慣らされているから、期待などしていなかった。


妻の誕生日に、花の一輪も贈ったことのないままに、あの世に逝ってしまった夫だが、はたして今頃は後悔しているだろうか。いやいや、後悔どころか、前世より、もっといい女はおらぬかと、探していることだろう。

(ふふふっ。お性根を先に直さなんだら、そうそう簡単にはいい女など寄ってきてはくれまへんよ。この頃の若い人、みーーんな、釣ったサカナにも、花か団子か知りまへんがプレゼントしてますんよ)



2 件のコメント:

  1. イギリスへホームスティ・・・おばあちゃんはご心配ですよね。でも大丈夫でしょう。今の子はしっかりしています。(自分の孫じゃないから、こんなことも言えます)

    私も旦那からお花なんて貰った事ないですよ。当てにしたこともありません。花どころか、おめでとうの一言もありませんでした。マ、これはお互い様。私もプレゼントはしませんでした。

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    1. お互い様ねえ……。私はおめでとうは言ってたし、実用品(例えば買もうやぶれそうな靴下を買うとか、どうせ買わなければならないもの)を包んでさしあげてたよ。(笑)

      ま、突然花なんかもらったら、???と思っちゃうね。

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