2012年6月6日水曜日

ついでに歯磨き粉の話


昔、歯磨き粉といえば、本物の粉だった。
中側にパラフィン紙の袋の入った二重の紙袋に入っていたように思う。

我が家では、その角のところを、少し大きめの三角に切り落とし、そこから歯ブラシを差し入れて、歯磨き粉をつけていた記憶がある。

どうしたわけか、歯磨き粉というやつは、やたらに軽く、ぽっぽ・ぽっぽと飛び散った。歯磨き粉をつけた歯ブラシを口にくわえて咳でもしようものなら、胸もとは薄いピンクの粉だらけになってしまったものである。

その後、半練りのカン入り歯磨き粉を使った時代が続き、そしてチューブ入りに格上げされていったのだが、チューブ入りを使いはじめたころは、何となく贅沢をしているような気分になったのを覚えている。

さて、そのチューブ入り歯磨きの話なのだが、昔、夫が洗面所から、
「おーい、歯磨き粉がもうないぞう」
と叫んだ。(当時も我が家は『歯磨き粉』と言っていた)

人には、いろいろなタイプがあって、私はチューブの歯磨き粉は、両手でしっかりしぼり切ってしまわないと気がすまず、最後の二、三日は、チューブと格闘ということになる。終いはチューブの裾をはさみでチョキンと切って、チューブの中に歯ブラシをねじ込むことまでやっていた。(バカな買い物をするくせに、こんなところでケチケチしているのだ)

だから私は、夫に新しい歯磨きチューブを手渡してから、いつものように、夫の捨てたチューブをそっと拾い上げて、洗面所の片隅に置いた。まだ十日は使えるからだ。

私が洗面所から二、三歩出たとき、
「おーい、おーい。早うどなんかしてくれー!」
と言う夫の声に驚いて洗面所を覗いた。

小さなグローブほどもある左手で握りしめた歯磨きチューブを、高く掲げ、ながーく垂れた中身を、右手で持った歯ブラシで受けている。歯磨き粉は、切れもせずに三十センチほどもぶら下がって、小さくふるえていた。
「どなんかしてくれ」と言われても、元に押し込むこともできぬではないか。これで顔を洗うわけにもいかない。

昔、ある新聞のマンガに、これとよく似たことが載っていた。
おかあさんが使い切ったチューブを、おじいさんとおばあさんが、二人がかりでしぼり出して使う。
次、おとうさんがペンチみたいな道具を持ち出してきて締め上げる。
最後はクリちゃんという男の子が、新しいチューブを握り締め、紐のように長い歯磨きを出してしまう、というものだった。

我が家にも、クリちゃんはいたわけで、私はマンガを見ていたおかげで、巨大なクリちゃんのやらかしたことを、ただただ笑っただけだった。

                    

2 件のコメント:

  1. ごまめさん、私の時代になると浅い缶に入っていました。(つめかえようが袋でした)始めに使うときは気をつけて開けないとこぼれるんです、よくもったいないと叱られたもんです。それと歯ブラシについた水が入ると気にしたもんです、今思えばあの粉を練りこんでるんですよね。子供ながらに濡れた粉がどうなるんかと心配して蓋をしていました。本当に便利になりましたね・・・・・

    返信削除
    返信
    1. kyamiさんも、カン入りを経験しましたか。(^^)
      今のように色々な種類はありませんでしたけどね。
      今はピンからキリまで。迷います。値段の違いほど、効き目が違うのかどうかは疑問ですが。

      削除