2013年3月26日火曜日

筆箱


卒業式も、終業式も終わると、昔は、子どもたちの姿が菜の花畑や、あぜ道にちりばめられていたのだが、今はそんな光景は、滅多にお目にかかれない。ただ、大型店舗の中を歩くと、子どもたちも春休みなんだ、と気付かされる。

新学期の準備だろうか、文具売り場には、やはり子どもたちの数は多い。消しゴム一つ買うにしても、驚くほどの種類があるものだから、あれこれと迷っている様子が微笑ましい。

僅か半世紀ほどの間に、文房具のすべてが様変わりしている。息子の文房具を買った記憶はあまりないのだが、鉛筆も消しゴムも、それを入れる筆箱も、迷うほどの品数はなかった。今は、選ぶことも楽しみながら、あれこれと選べるのだから、ほんとに夢のある時代である。筆箱だつて、どれがいいかと何時間も迷いそうなほどたくさんあるのだ。

筆箱で思い出した。

昔、K先生が、1年生の道徳という授業をされたのを見た。先生は、【ものを大切にしましょう】ということを教えられていた。「皆さんの今使っている筆箱を小学校卒業するまで使ったら、筆箱は喜ぶだろうね。6年間使った子には、先生、ご褒美あげますから、皆さん、頑張ってみてね」と、最後におっしゃった。

先生は、そんな約束を忘れてしまったらしく、子どもたちに、筆箱のことは、尋ねぬまま、卒業させたらしい。

すると、ある日、一人の子どもから、手紙がきた。「先生との約束を守った子がいます。A君は、1年生の時の筆箱を、今も使っています」と。

先生は、驚いてA君に詫びながら、ご褒美を贈ったという。

これを聞いて私もとても感動した。褒められた子どもも教師も、そしてそれを知らせてくれたA君も、いいことしたものだ。

こんな教育現場、今はどうなんだろう……。

2 件のコメント:

  1. 6年間の授業の一齣一齣、子供たちの一人一人を、ずっと覚えているのは先生といえども大変ですよね。不可能に思えるんですが子供たちの方はちゃんと覚えている。先生って大変な職業ですね。

    この頃学校でどんな文房具が使われているのかさっぱり分かりません。ボールペンで書いた文字を消す道具、修正液とか言うのを事務室で使っているのを見て買ってみましたがうまく使えませんでした。

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    1. 最近は、ボールペンの先に、消しゴム?のついたものもありますね。ただし、そのボールペンの字しか消えませんけどね。
      修正液は、滅多に使わない場合は、なかなか最後まで使い切るのは難しいですね。出なくなったり、かたまったりしてしまいますから。

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