2013年5月20日月曜日

感動!


昨日、【市民で創る郷土の演劇】『すみれの花咲く頃』の公演が無事終わりました。無事といっては語弊があるかも分かりません。ゲストとしてお迎えした元宝塚女優【安奈淳】さんが、体調をくずされて、出ていただけなくなったのです。金曜日に徳島に来られたのですが、その日から、一度もお稽古に出ることなく倒れられたのですから、ご本人も、私たちもどうなることかと心配いたしました。

でも、当日、開幕の2時には、車椅子に乗って、会場の皆さまに、心よりのおわびをおっしゃいました。

安奈さんは、言葉に窮して、泣いてしまわれました。開場の皆さんは、その言葉に感動して、あちらこちらから、すすり泣きの声があがりました。出演者、お世話をしてくださった方々も、むろん涙です。

人の言葉というのは、不思議な力があるものです。気持ちを伝える道具にすぎないように思われがちなことばですが、その人の心の中の真実、悲しみ、愛情までも伝えることができるのです。すると、聞く人は、そのことばの正体を感じとってしまいます。歌を聞いても、同じです。心をこめた歌を聞いてこそ、私たちは感動できるのです。

会場の皆さん全てが、安奈さんのフアンではありません。むしろ、安奈さんをあまり知らない方も大勢いらっしゃっていたと思います。
でも、そういう方たちも、感動と、優しさの涙を流したのです。

出演者は、そうした安奈さんのお言葉で、ますます「しっかりと安奈さんにご迷惑かけんようにしなくては」という気持ちを頂き、いつもよりもいい出来の劇となりました。安奈役は、安奈さんをお世話してくださったお友達の内藤順子さんが、「安奈淳さんの代りです」とおっしゃって、劇をすすめました。とても素敵なお方です。

劇の最後に、私たちと、安奈さんが、いっしょに白ばらの歌をうたう場面では、再び車椅子で、舞台の中央に出てきてくださったのです。そしてマイクをにぎり、うたってくださいました。カーテンコールも、ごいっしょに……。ご無理をなさったはずです。ここでも、大きな歓声と拍手です。

安奈さん不出演のマイナスは、あったかもわかりません。しかし、それ以上のものを安奈さんは私たちや観客に与えてくださったことは確かです。

もし、安奈さんがお元気でお芝居に参加いただいていたら、楽しく満足できたかもわかりません。でも、安奈さんと、私たちの心の交流は、どうだったでしょうか。涙を流すほどの感激をいただけたかどうかはわかりません。

車椅子の安奈さんから投げられたボールは、皆さんの胸のポケットに、ずしりと仕舞われています。

幼いころを思い出してみました。何ごともなかった運動会は、いつの間にか忘れ去られていますが、雨の中の泥んこの中で走って転んだ運動会は、いつまでも懐かしく忘れられません。私たちの胸の中に、しっかりとたたまれています。

昨日のことは、雨の中の運動会と同じです。

安奈淳さま。ありがとうございました。
そして初めからお終いまで、心から私たちをご指導いただいた浅香寿穂先生、お疲れになられたことと思います。また何日も浅香先生と一緒にご指導いただいた内藤順子先生はじめ、多くの方々、客席で感動してくださった観客の皆さま。
更に、最高齢者の私めを、いつもいたわってくださり、我がままを許してくださった優しい出演者の皆さんに、心よりの感謝を申し上げます。

自称前向き婆さんの私め、自分の不出来は棚上げにして、よかったよかったと、喜んでおります。

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