2013年9月30日月曜日

恩師 その1


旅の話が長くなっているが、続きを書いておこう。

昨日は、子どものころ家族で遊んだ十勝川温泉郷の雨宮温泉で車から降ろしていただいて泊った。まだ、ホテルもタクシーも、エアコンは付けていなかったので、ちょっと暑くて寝苦しかったが、朝方は、ひんやりとしている。

大きな目的である、恩師の消息を調べるため、タクシーで、小学校に向かう。校舎は、新しく鉄筋に建て替えられている。

夏休みのため、職員室には、教頭先生がお一人いらっしゃった。
あれっ? 机の上のお名前は昔、近所にすんでいたKちゃんだ。お尋ねすると、そうだとのこと。残念ながら、私のことは憶えていないらしく、「そうですか」のご返事。ああ残念。

12年と担任してくださったA先生と、5,6年の時のN先生おふたりは、ご健在で、A先生は札幌に、N先生は、市内に住んでおられることがわかった。嬉しかった。特にお二人の先生には、2年間もお世話になっていて、思い出もたくさんあって、特にお会いしたかったのだ。

帰りは、通学路であった道を踏みしめながら、予約してあったホテルに向かい、さっそく、N先生に電話をした。昔と変わらぬ先生のお声が私の耳にとびこんできた。あの嬉しさは、ちょっとことばでは言い表せそうにない。私のことをよくおぼえていてくださったのは、ほんとに嬉しく、有難かった。

先生は、まるで小学生の私に言い聞かすように、家までの道順を教えてくださり、すぐに昼食はせずに、11時のバスに乗るように、とのこと。多分、先生の頭に中には、おかっぱの私が浮かんでいらしたに違いない。その瞬間から私も、小学生気分になってしまった。

教わった通り、バスに乗って前方をみていると、やがて見覚えのある先生のお顔が、フロントガラス越しに目にはいった。

バスを降りてご挨拶を言い始めると、先生は、にこにこしながらも、そんなことより、早く家に、と言わぬばかりに、すたこら歩きだす。ちょっと背を丸めて、手を勢いよく後ろに大きく振って歩く動作が、何とも懐かしいこと。昔とちっとも変らぬ先生。お家には奥様が、お昼の準備をして、待っていてくださった。

退職後の先生は、数学の専門家らしく、研究のかたわら、覆面算とか、虫食い算とかルービックの面の模様作りとかいうパズルにも凝られて、実に楽しい毎日を過ごされて、旅行に行く間が無いとか。

私の目の前で、キューピックをくるくるして、またたく間に色々な模様をつくられて、私を驚かせてくれた。

先生の思い出といえば、何人かで、先生のお宅に押し掛けて、泊ったこと、授業中、よく笑わせてくれたこと、毎日帰り際に、続きものの創作童話を話してくださったこと、毎日違うネクタイを締めてくるので、ネクタイは何本もってるのかと、皆が話していたことなどなど。そんな話をすると、先生は、目を細めて「そんなことあったか?」と笑っていらっしゃった。

奥様とおふたりで、ぜひ徳島にいらしてくださいとお願いして、夕闇せまる頃、お別れしてバスに乗った。

長い間思っていたことが、実現した喜びは、ほっとするというか、肩の荷を下ろしたというか、何とも言いつくせぬものがあった。もう一度、お元気なうちに、お尋ねしたいと思った。

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