2012年9月20日木曜日

住まい~その2


私は、もう10数年前から、右膝を痛めていて、正座ができない。どうしても座らなければならないとき、たとえばお通夜にいって、亡くなられた方の御顔近くでお焼香しなければならないときは、お行儀が悪いが右足を横にずらせて横座りになるか、お尻をちょっと持ち上げて、中腰になるかしなければ出来ないのだ。

それとやはりトイレである。和式のトイレでは、何とか用がたせても、立ち上がるのがひと苦労で、よいこらしょ、ということになる。なかなか立ち上がれない始末。

おかげで今は、どこへ行っても洋式トイレが幅をきかせていて、不自由はないのだが、それでも築何十年というようなところでは、和式のトイレのままという事が多い。

戦後のしばらくは、洋式トイレはほとんどなかった。「外国人は、あんな腰かけた格好で、よくできるものだ」と言っていたのを思い出す。

その頃、旅先で、こんな話が耳にはいった。「あの腰掛けるヤツでは、出るモノも出んわ。しかたない、上にのぼってするしかない」と。土足で上にあがって用をたしたというのだ。

そんな時代でも、腰のまがった、膝のがくがくしたお年寄りはいたのだが、一体、どんな工夫をしていたのだろうか。

それが、いつとはなしに、じわじわと洋式トイレが侵入してきた。

今では、和式トイレの家庭は、ほとんどなくなっている。

最近出来た近くの大型店舗内のトイレは、ずらりと8つのトイレがならんでいても、そのうちの1つだけが和式で、あとの7つがお尻洗浄付きの洋式というようになっていて、和式でしかできないという方にとっては、まことに不便なトイレ事情となっている。ちょっと以前と、まるで反対になっているのだ。

最近の子どもたちは、和式トイレで用をたすことが出来ない子どもも多い。
まだ幼稚園に、洋式トイレがなかった時代、ある子どもが、昼休みに青い顔をして走ってかえってきて言うには、ウンチがしたくなったけど、学校のトイレでは出来ない。ひっくり返りそうで怖い、と。親は、それから何回か子を連れて、和式トイレのあるデパートに、トイレの練習に通ったという笑えない話もあった。
また、マーケットの和式トイレに入った子どもが、上手く出来なくて、汚してしまい、親が後始末していることもあるとか。

ホテルでも、もうウォッシュレット付きの洋式トイレに改善しているところがほとんどである。
「○○さんちのお便所は、お尻まで洗えるらしい」「へえー。どんなにして洗うんだろう?」なんて噂話をしていたのは、50年も前だったろうか。随分と進化してきたものだ。

洋式が増えると、トイレの汚れ方も違ってくる。旅の途中、列車や公衆トイレが汚れているくらい気持ちの悪いことはなかったが、今はもう、そんな心配はせずに旅ができる。ありがたいことだ。

今も、中国から帰った人の話では、一歩田舎にでると、とてもじゃないがトイレだけは……という声を聞く。中国旅行など、お金をくれても行きたくないと思う。

ただ、こんな話も聞いた。「日本人の足腰が弱くなったのは、ベットになって、蒲団の上げ下ろしをしなくなったことと、和式トイレを使用しなくなったからだ」と。
ほんとかなあ……。

 

2 件のコメント:

  1. 昭和50年代、隣家が洗浄便器の宣伝を始めました。その頃の近所の評判(誰が10万円も出してお尻洗いなんて買うものか)

    それが今はケアハウスでさえ各個室に洗浄便座つき。時代は変わりますねえ。今、私が和式便器に出逢うのは、公の集会所だけ。ここは入ると一段高いところに和式の便器があります。かなりの高さですから、ウントコショと上がっておもむろにしゃがむ、やっぱり、年寄には苦痛ですね。

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    1. 日本の生活レベルの向上は、何といってもすばらしいですよ。
      しかも、落ちこぼれが少ないですよね。
      中国にもお尻洗う家庭はありますが、まだ、穴を掘って……といったような家庭もあるのですから。

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