2012年9月2日日曜日

9月





9月というのに、まだ真夏のような暑さが、日本全土に居座っているようだ。温暖化ということばが気になる。北海道でも、今日も30度を超すような暑さなのだ。

20数年前の夏、北海道に行ったが、北海道の夏は、エアコンがなくても過ごせる暑さだった。

30年前に北海道に行った時は、汗ばむような日にタクシーに乗ったのだが、クーラーは付いていなかった。

「北海道のタクシーには、クーラーはつけてないのですか?」と尋ねると、「クーラーの欲しい日があっても、夏が短いし、しかも、朝夕は、気温が下がるので、ほとんどつけてません」という返事だった。むろん、泊った温泉ホテルにもなかった。

このまま、温暖化が進むと、50年も先には、日本はどんな暑い国になっているのだろう。

昔は、9月ともなると、秋の風情があちこちにみられたものだ。秋風にせき立てられて、女どもは、針仕事に忙しくなる時期でもあった。

夏の間に着物を解いて洗い張りをしたものを、秋口になると、着物に仕立てるのだ。着物をクリーニングに出すなどということは、昔はしなかった。

着物をほどいて洗い、伸子張り(シンシバリ)や、張り板で乾かし、膝あたりの布の痛んだ所をうまくまわしながら、仕立て直すのだ。

母は、嫁入り前の私に、こんなことをよく言った。
「あんたも仕事で忙しいだろうが、和裁を習いなさいよ。、袷や綿入れの着物が縫えるようになっていないと、嫁にいったら、家族の着物を縫い直す仕事は、嫁の仕事やからね」と。私は、「仕事しているんだから、仕立て屋さんに頼むわよ。習う暇なんてないわ」と言う。
すると母は、「新しい着物なら人に頼めるけど、古い仕立て直しの着物は人には頼めないものよ。布の傷み具合をみながら、あっちにやったり、こっちにまわしたりして仕立てるんだから。後悔する時がくるよ」と言うのが、決まり文句だった。

母は、昔の女学校で裁縫をみっちり習った上に、とても上手だったので、卒業してすぐ、その女学校の裁縫の先生の助手のような仕事をしていたらしい。
戦後は、仕立て物の内職をしていた。
私が習う気さえあれば、母に習うこともできたのだが、そんな気分にならなかったのは、忙しさだけではない。私自身、女学生時代、学校で習って縫ったものを、家に持ち帰って母に見せると、必ず叱られた。こんな縫い方ではだめだと言って、母が「よく見て憶えるように」といいながら、縫い直してしまう。仕上がった着物は、総て母の縫った作品になっていた。もう、不器用な私には、袷の着物など、縫えないと諦めていたのだ。 

7月の夏休みに嫁入りした私は、9月になったある日、義母から洗い張りした夫の丹前の布を渡された。

「これ、寒くなるまでに縫うときなさいよ。綿は新しいのを入れたらええ」と。

母の言ったとおりのことが私の身にふりかかってきた。
浴衣くらいしか縫えない私が、綿入れの丹前など縫えるはずがない。
慌てて母のところに持って行き、縫って貰った。

義母は、その丹前をみて、「よう縫わんのなら、そう言うたらええのに」と笑っていたが、義母も驚いたに違いない。
それからは、もう義母からは仕立て物は頼まれなかった。

夫や自分のものは、こそこそと母のもとに何度か運んだが、それも、いつの間にかせずにすんだ。着物とご縁がなくなっていったからだ。

今はもう、針仕事などという仕事は、職業としている人以外は、したくてもない。
それに、着物など着ている人もめったに見かけない時代になってしまった。
私には【先見の明】があったのかも。()

とはいいながらも、私の年頃の者は、いくら不器用であっても、浴衣くらいは何とか縫えるし、襦袢の半襟もすっぱりと付けられる。戦後の家庭科教育では、着物のたたみ方も危ぶまれる。

その代わり、着るものへの感覚やセンスは磨かれていて、私らは敵わない。時代に合った教育を受けているのだから、それでいいのだと思う。

 

6 件のコメント:

  1. 9月になったばかりでは、まだ夏ですね。
    我が家の水道水は30度もあります。
    ゴマメさんが和裁を習おうとしなかったのは、
    時代を先取りされていたようですが、どんなに強い
    人でも時代の流れには勝てません。
    古代エジプト文字を解読すると「いまどきの
    若いものは・・・」と書いてあったそうです。

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    1. >古代エジプト文字を解読すると「いまどきの
      若いものは・・・」と書いてあったそうです。
       
      なるほどねえ。いつの時代も同じですね。(笑)
      そうやって、どんどんと進歩してきたんですよね。

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  2. 若い時はミシンも使いましたし、着物の仕立てもしました。それどころか、1週間あった夏休みには家族中の布団の洗濯もしましたよ。でも今は、なーんにもしなくて、いえ出来なくて、楽かというとそうでもないです。

    何もしなくていい時代と言うのはいいのか悪いのか。みな、企業にお任せでは何かあった時に脆いかもね。まあ、私はこの世の生活もそんなに長くないと思うので、このまま終われるのかな、と思っています。

    お盆過ぎって何か寂しいと思いませんか。暑いけれど暑さに勢いがないみたい。そろそろ、夏バテの症状が出そうです。

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    1. そうそう。私もミシンで自分のスカートやドレスは下手なりにつくっていました。
      着物はまっすぐに縫うところがほとんどなのに、裏がだれたりつったりして出来ないのは、やはり、不器用だったんです。

      mimiさん、今は着物の仕立ては出来なくても、パソコンができる。すごいよ。(笑)

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  3. 夜は、西風が吹き少し涼しくなってきましたよ。お昼はまだ暑いですね。
    和裁洋裁はまるでだめです。学生のころ、夏だけハギレ(布)を買ってきて、スカートは輪にしてミシンで片方を縫ってウエスト周りは二段にゴムを入れて終わりです。ブラウスはノースリーブで簡単明瞭でしたが、結構格好良かったです。
    不器用でしたが、困ることがなく過ぎてきました。でも年配の方たちが、自分で縫ったり補修しているのを見ると、うらやましく思いました。随分仕立て屋さんにお世話になりました。

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    1. 朝夕の風は、夏の終わりを感じさせてくれますね。
      もう少しの辛抱でしょうか。

      私も、退職後、洋裁は習いたいとおもつたことがあります。何となく、自分で素敵な洋服がつくれそうにおもつたのですが、既製品の種類も増えてきて、安く手に入る時代になってきたものですから、踏みきれませんでした。
      考えてみたら、着物がまともに縫えないものが洋服が既製品並みに夢縫えるはずありませんね。(笑)、、

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