2013年1月7日月曜日

毎日新聞より


昨年暮れの、東京版毎日新聞(夕刊)に、仙谷氏にインタビューした記事が載っているのを教えていただきました。その一部を載せておきます。

−−自身の選挙結果をどう受け止めていますか。

 過去8回の選挙で一番体を使い、選挙カーを降りて走り回ったけれど、半分は時代の風、半分は西日本の「日本維新の会」突風に吹き飛ばされた。「時代の風」とは、メディアポリティクスの中で有権者が雰囲気で動くことが大きいこと。実績があろうとなかろうと吹き飛ばされるときは吹き飛ばされる。さらに私の場合、メディアによる「影の総理」「闇の何とか」とのレッテル張りが相手陣営に利用され、私にとってマイナスに働いた。

 −−反省すべき点は。

 とにかく個人の力量を超える部分が大きかった。選挙にプラスにはならないけれど、事業仕分けから東電・電力改革まで上出来だと思います。世間は評価してくれないけれど、東日本大震災の被災者生活支援本部を切り盛りすることはあの時点で私以外にはできなかった。遅いとか少ないとかの批判報道ばかりだが、世界のレベルから見れば民主党政権がやった復旧復興は上出来だと思います。

 −−年末の解散・総選挙。予想していましたか?

 この時期に突如選挙をするとも、党首討論で野田首相が言い出すとも思わなかった。違憲状態のままでの選挙はいかがなものかと考え、発言していた。党として準備をしないと選挙は戦えない。もう少し先にしていれば100議席を超えた可能性がある。

 −−「マニフェスト違反」にはどう反論しますか。

 消費税はマニフェスト違反ではない。マニフェストに消費税を上げないと書いていません。政治は時と状況によってマニフェストに書いていないことをやらなければならないこともある。今回は消費税を上げると決めて選挙で問うた。それで国民がダメといえば仕方ない。それくらいの覚悟がないと政治はできない。

 −−菅元首相はかろうじて比例代表当選でしたが。

関ケ原以西と以東は明白に違うね。西のメディアはここ1年数カ月、阪神タイガースと吉本興業と(橋下)徹ちゃん。これにはなかなか勝てない。関ケ原以東はそれが緩和されていたのではないか。菅さんが小選挙区で落ちたのは、彼の政治手法に対して信頼が薄れたということじゃないですか。野党にいると瞬発力はあるし魅力的ですが、トップリーダーとしての信頼感に疑問符が付いたのでしょう。

 −−菅さんは「脱原発解散」を考えていたそうです。

 当時僕は官房副長官ですから、可能性はあると感じていました。彼が「エネルギー基本計画で53%を原発でまかない、温室効果ガスを減らそうとしたのは間違ってました。自然環境や人間に対する負荷が少ない脱原発をやるしかない」と総括して、新党を作っていれば見上げたもんだとなったでしょうね。

 −−対立し続けた小沢一郎さんをどう見ていますか。

 嘉田由紀子滋賀県知事を持ち上げたのは、93年に細川護熙さんを担いだ時とやっぱり同じことするんだな、この人は、と思いました。僕に言わせたら、今さら反原発とは何なんだ、です。だって、自民党政権の中枢にいて電力会社や原発の恩恵をたくさん受けたのではないか。まあ、岩手県には原発はないけど。

 −−小沢さんがひのき舞台に立つことはもうないですか。

 そう思いますけど。

 −−今回のように議席の大きな振幅を避けるには小選挙区制を変えるしかないのか

 選挙制度の問題だけでなく、メディアと有権者の問題がある。自分がどのようにして政策決定に参画するのかを考えないと民主主義は成り立たないのではないか。甘えるなとか言われるけれども、政治家や政党をコストをかけて育てるという意識を持ってほしい。ある種の政治エリートを育成するシステムが必要だ。少なくとも若いときに、法律、経済、歴史哲学をきちんと学んでいない人はトップリーダーにはなるべきではない。その点、90年代以降の日本のトップリーダーは厳しい評価を受けざるを得ない。

 −−党再建はどうする?

 今後2回の総選挙を経て連立もしくは単独で政権を取ることを目標に、5カ年計画を作るべきだ。政党とは何かを議論して、先進国の例を分析して政策体系を策定する。党組織や地方組織にしっかりした軸を作る。新しい代表にはこれにじっくりチャレンジしてほしい。今の安倍政権は「近欲(ちかよく)」に迎合している。再建民主党は先進国の本当の豊かさは数字で表せる金銭的・経済的価値だけでいいのかを問い直すべきだ。求められれば僕なりの考え方を言うが、どう関わるかは2、3カ月休養して考えたい。
 
【聞き手・松田喬和】
 

 

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