2013年10月8日火曜日

ものみの塔


【ものみの塔】のAさんという方が、先日訪ねてきてくださった。

もう、何十年も前のことになるが、信者の方たちが、家の前のちょっとした空き地に集まって、何やら話しあい、手分けしてそのあたりの家を個別訪問しておられた。(今もよく見かけます)その時、我が家にも真面目そうなAさんという女の方がこられて、ぜひ話だけでも聞いてほしいとおっしゃられたので、「私は、まったく【もみのみの塔】には関心もないので」とお断りしたのだが、その方は、ただ聞いていただくだけでいいとおっしゃって動かれない。
ふと、そのとき、こんなにも熱心な信者になられる方たちに興味がわいてきて、部屋にお通しした。
ちょうどある事件があったことも思い出したのだ。

それは、ある信者の方の息子さんが、自動車事故に遭い、輸血が必要というのに、父親がそれを拒否して、結果的には、子どもは亡くなられたという事件だった。

Aさんが、色々と話されたあと、私が質問すると、たいては、「それは神さまが、そうおっしゃっている」と、聖書に書いてあるとおっしゃるのだが、自分が分からないことは、「次の時までに勉強しておきます」と素直におっしゃる。

輸血拒否問題も、子を死なせた親は、悲しいけれども、子どもは神さまによって、幸せな子に生まれ変わっていると信じているので、我々の常識とは次元が違う。

「どういう本を読まれていますか」と尋ねると、「本は、読まないことになっています」と言う。いらぬ知識は持つなということらしい。
「なぜ、選挙は棄権するの?」という問いには、「この世の中を治めるのは、神であって、人間ではない」と。「じゃあ、無政府主義ですか」というと、「いえ、神が治めてくださるから……」と、自信を持って答えてくれる。

いただいたパンフレットの絵は、ライオンや猿などの動物と人間が、仲良く一緒に暮らしている。「こんな時代が、本当に来ると思っているのですか?」「はい」……と。

Aさんとは、その後3度ほど話あいをして、お別れした。私としては、もう【ものみの塔】という宗教のあらましが分かったように思ったし、深みに入っていく方たちの気持ちも、ちょっとばかり分かったように思ったのだ。

正統派のキリスト教とは違った聖書の解釈をしているのだが、人を傷つけたりするような団体ではないので、あまり問題にはならないようだ。

ただ、やはりマイルドコントロールされているな、と私には思われた。問題なのは、ほとんどの方が、自分の幼い子供にも、そういう教育をしているので、その子たちが大きくなって、自分の才能や、能力を伸ばしきれないままに宗教活動をするようになるのは、はたしてどんなものなのかと、疑問に思う。以前の事件のように、親のお蔭で命を落とす子が出てくることもありうるのだから……。

久しぶりにお会いしたAさんは、5年ほど外国へ行かれていたとか。相変わらず布教活動はなさっておられる様子だったが、私には何の布教もなさらず、(もう諦めてる?)「お元気そうですが、毎日どうなさっていますか?」と尋ねてくださった。
「世のため人のためと信じて献身的に活動されている貴女達のような生活ではありません。これといった宗教を持っているわけでもありませんが、でも、自分で出来そうなことであれば、頼まれごとも、小さな親切も喜んでしています」と、ありのままを申した。あれこれと、世間話もしてお帰りになったのだが、幸せそうなお顔に私もほっとしたことだった。

「幸せは、脳の中にある」と言われたお偉い方がおられるが、幸せとは、一体何なのだろうか、と考えさせられた日であった。

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