2013年8月27日火曜日

辛夷の思いで


今年の8月分の電気代が、昨年の同月にくらべて、1万2000円高くなっている。エアコンの使用がそれだけ多かったということのようだ。いや、それ以上かもしれない。というのは、今年春、室内の主な電気をLEDに変えているから、照明代は、さがっているはずなのだ。

酷暑だったのは言うまでもないのだが、暑さの原因は、もう一つあったことに気付いた。西の窓を大きく覆っていた辛夷の木の太い幹が割れて、窓全体が、景色丸見えの窓となっているのだ。老木の上、根が傷んでいる様子だったので、幹が大小二つがくっ付いていたものが、昨年春、季節外れの台風に、二つに割れて、太い方が倒れてしまったのだ。堂々たる枝を、拡げていたのだから、かなり、気温をさえぎってくれていたのだろう。よく、ゴウヤ、へちまなどを植えて、みどりのカーテンをつくることを奨励しているが、辛夷は、そんな役目をしてくれていたのだ。

辛夷は日よけだけではない。春先には、白い花をみごとに咲かせてくれたものだ。気品のある花なので、花が咲き始めると、だれかれとなく、「辛夷の花、もう咲いた?」と、電話があった。今年の春は、私も気を落としていたが、写真を撮りに来る方、俳句を作る方、花好きの方、皆さんがっかりなさったものだ。去年夏休みに帰ってきた孫も、知らせてはあったが、あわれな辛夷を見て、ひどく驚き、「あーあ、私が生まれた時から、ずっと眺めていた樹だったのに……。涙がでそう」と残念がった。遠目にも巨木と分かる辛夷の木は、我が家のシンボルだっただけに、惜しい。

そんなわけで、今年の夏も、辛夷の恩恵がなく、酷暑がもろに我が家に襲いかかったのだ。

辛夷が倒れてからは、どこにいっても、辛夷の木が目につくようになった。「やっぱりうちの木が大きかった」と、ヘンな自慢気が頭をもたげている。

花の咲く春になると、あの寂しげな白いカップの底の薄いピンク色をにじませた楚々とした花をみながら、「今年も咲いてくれたね。ありがとう。1年は早いよね。また来年も頼みますよ」と語りかけたものだ。

残された辛夷は、何時頃から親木にひっついたのか知らないが、枝を全部南側に延ばしたまま、今年は僅かだが白い花を咲かせていた。この樹が親木と同じように、根がおかしくなっていたら、あまり期待はできないのだが、今のところ、何とか倒れる気配がないので、そっと見守っている。新しい辛夷の苗木を植えるつもりはない。

2 件のコメント:

  1. 電気代高いですね。辛夷の樹、花の見事さだけじゃなかったんですね。惜しい。残念。でもきっと寿命だったんでしょう。辛夷として命を使い切ったんだとおもいます。見事な生き様です。

    クーラー風邪を引いてしまいました。3日ほど食事を自室に運んで貰っています。

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    1. おやおや、お風ですか。気を付けてくださいよ。温度差が、朝晩と昼、かなり有りますし、うっかりつけっぱなしにしてますと、風邪ひくことありますからね。

      辛夷の日蔭がなかったのは、昨年もいっしょですが、去年は、そんなにおもわなかったので、やはり、今年の暑さは、異常だったんでしょうね。

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