2013年11月15日金曜日

脚本家 向田邦子


向田さんの魅力は、もう、私がここに今更書くことも無いと思います。向田さんにしか書けないものをたくさん残して逝かれました。

エッセイも上手かったですが、彼女の脚本も、また素晴らしいものでした。彼女は、【テレビドラマは、実際の生活を追う影法師、日常生活の公開番組なんです】と言っています。やはり、どんなドラマであっても、実生活と地続きだということです。

しかし、どんな実生活であっても、現実を乗り越えて?ペンの力であれだけの面白い、しかも分かりやすい作品に仕上げて、人々を感動させるその腕前は、やはり天才だと思わざるをえません。

彼女は遅筆で有名でした。役者さんは、まだかまだかと、原稿の届くのを待っています。向田さんは、相手を待たせ、切羽詰まっているというのに、音楽会に行ったり、映画館に行ったりしてしまうのです。【子どものころから、しなくてはならないことを先に延ばす癖があった】とエッセイに書いてありますから、おとなになってもその癖は変わっていなかったのでしょう。

こんなことを書き出したのは、実は私も、ちょっとした台本を近いうちに書き始めたいと思っているからです。むろん、私は向田さんのようなモノ書きではありませんから、原稿取りに追っかけられるようなことはありませんが、それでも自分なりに、どれくらいの時間で書き上がるか、ということを計算します。そして、早々と書きたくなります。なるべく早く書きあげたいとも思うので、他の用事A・B・Cがまだ残っているにもかかわらず、考え始めます。というのは、いつも、何度となく書き直さねばならなくなるからです。どういう展開がいいか、なんて考えているうちに、AやBのことが気にかかり、そちらに転じます。

私は向田さんと違って、何日も前に仕上がらないと、気がすまない性なので、早々と仕上げます。そのかわり、色々なミスが目立ちます。(笑)

彼女が、切羽つまる、というのは、時間の問題といったように、それこそ切羽つまったときで、そんなときに音楽会や、お芝居観るのですから、私とはちがいますが、向田さんの気持ちはよく解ります。私のような者でも、行き詰まりのときは、無償に他のことがしたくてたまりません。家具の移動とか、本棚の整理、衣類の整理、といった、今どうこうしなくてもいいようなことがしたくなるのです。気分転換ということでしょうか。
 
彼女はいつか【書かなくていいなら、一行も書きたくない】なんて言ってましたが、それは嘘です。書くことが大好きでなければ、あんな名作は生まれません。

彼女が生きていたら、ちょうど84歳でしょうか。私より一つ上と記憶しています。どんなモノを書いているでしょうかねえ。それにしましても、惜しい方を早くに失ったものです。

 

4 件のコメント:

  1. 向田邦子さん、生きておられたら今月28日で84歳ですね。作品を読めば読むほど、若くして亡くなられたことが無念です。
    遅筆というと、井上ひさしさんもそうです。自分で遅筆堂と名乗っていたほどです。
    40年ほど前に読んだ作品のなかで可笑しくてふきだしてしまい、いまだに忘れられない個所があります。その作品に登場するロシア人の名前が、イワン・イワンコッチャナイノビッチ・イウテモショウガナイノフスキーと言うんです。

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    1. くっくっく。へえーっ。こういうふざけかたって、楽しいですね。やってみたいわ。(笑)

      向田さんにしても、井上さんにしても、ぎりぎりになったら、すごいものが出てくる頭脳をもっていらっしゃるから、通るのでしょうが、周りの方は、大変でしょうねえ。

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  2. ごまめさんの脚本読んでみたいです。お芝居は見に行けませんので脚本だけでも・・・

    真実は虚実皮膜の間にあり、と言う近松門左衛門の言葉は、もともと演劇論ですから脚本には大事なんでしょうね。私は短歌を作るときも、この言葉とても大事にしてるんですよ。虚構の歌はどんなに上手に作っても、どこか心を打ちませんから・・・

    言うだけで実際の作品は、ぼろぼろでしけどね。

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    1. 私の書く脚本は、色々な制約がありますし、書いた後からも、先生(演出)の意見で変わったり、最後は先生の手がはいりますから私の作品といってもね。

      向田さんの様に、「1字たりとも変えないで!」なんて言えた身分ではありませんし、そんな自信もありません。

      演じる方も「ここ、ちょっと言いづらいから、OOに変えてもいいですか」とか。先生は「よろしい。でも、よその劇団に出演するときは、ぜったいに、そんなこと言わないように」なんて、釘さしてるときもありますが。(笑)

      mimiさんの短歌はもう、たとえ虚構であっても立派に真実味をおびたものになっていますからね。心うちますよ。(^^)

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