2012年3月26日月曜日

在所

昨夜は、年一度か2度の班の集会に出かけていた。
私の住む在所は、昔、私が嫁にきたときは、かなり広い在所にたった12軒という田園地帯で、わずかに点在する人家をつつんだ田園が、とても静かで美しかった。夕べともなれば、一斉に影絵となり、やがて闇になる。『狸の巣』ともいわれていたところである。(私はひょっとして狸に化かされて嫁に来たのかもしれない。)
 
部落では、毎月、各家を持ち回りで『お大師講』という集まりを欠かさずにやっていた。当番になった家は、大きなはんぼに、散らし寿司を作り皆さんに食べて頂く。12軒というのは、毎年同じ月に回ってくることになるのだが、わが家はちょうど蕗、筍、えんどう豆、といった食材が手に入る月回りだったので、「ここのお寿司は格別美味しい」と喜んでいただいたものだ。はんぼ山盛りの散らし寿司が、おかわりの声にくずされていく様子が、今も目に残っている。

そんな在所も、今はアパートなども含めると、五百軒以上ではなかろうか。もう、狐狸妖怪の息づいていた頃とは、まったく様子が違がってしまった。
固い舗道、残っている田畑のビニールハウス、スーパーや大店舗の看板が見え隠れするし、終夜をてらす防犯灯。どれも有り難い文明のお恵みだが、こうした文明に放逐されたものの中には、形にならない夢やロマンもありそうだ。

大きく様変わりした在所は、そのうちに班分けをして、新旧の家々が混ざり合って新しいグループができあがった。

昨夜の会は、集会所で私たちの班12軒の集まりだった。
会費1.000円で簡単な夕食(握り寿司弁当)と、缶ビールにおつまみおやつ、といったものである。班長さんの引き継ぎやら、会計報告などを聞き、あとは雑談でおしゃべりをする。

何十年か前、ここの在所に家を建てられた方たちも、ほとんどが子育てを終えられ、夫婦二人暮らしである。最近建てて入会された方1軒だけが、ご夫婦と子供さんで、ついこの間来られたのは新婚さん。まるで、日本の社会の縮図のような班である。

新しく入られた新婚さんご夫婦に、「しっかり子供作ってくださいよ、お国の為に」と、何人かが声をかけていた。戦時中の「産めよ増やせよ。未来の兵隊さんを産め、お国の為に」といった言葉をふと思い出して苦笑い。
戦後は「国の為に子供を産む」などと思って産んだ方は少ないだろうが、今は産むことがお国の為になるのだから、お国も、しっかりと若い方たちの応援をしていただきたいと思う。

(ああ、年寄り、若者、子供、みーんな応援しなければならない今の時代。一体どうなるのなしら・・・と、古女は心配でならないのであります。)

4 件のコメント:

  1. 懐かしいお話です。私の故郷もおんなじ。今年のお正月帰ってみたら、道路沿いに新しい家が5,6軒も建っていて驚きました。
    お大師講のお寿司なんて古い古い話でしょう。

    将来が不安なのは若い人だけではないですね。

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    1. どうも年寄りの書くものは、昔話しが多くなります。(笑)
      ま、しかたないわね。

      今は、国民総不安時代です。手の着けようがなくなるまで、傷みのともなうことを先送りしてきたツケ。どうしてくれるの?と言いたいですね。

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  2. 私の所では、八坂神社と八幡神社のお当夜が、回り持ちで当たります。昔は12,3軒だったのに、亡くなったり、人手がなかったり、面倒くさがったりで止めるという家が増え、去年からウチを含めて3軒になってしまいました。向こう3軒両隣も、転居したり亡くなったりで、お向かいさんを残すのみ。その代わり、家の前にマンションが建って「隣は何をする人ぞ」状態。挨拶を交わすこともありません。
    生協も、近所で集まっていたのに、2軒だけになって今では個別配送です。
    地縁も人と人との繋がりも薄くなって、ややこしくない代わりに寂しい気がします。

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    1. そうなんですよね。
      特に若い方の中には、転居してきても、自治会には入りませんと、はじめからお付き合いを拒否する方がおられます。
      隣近所は、何時何が起こるかわかりませんから、最低、自治会くらいは、入っていただきたいですがねえ。

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