2012年3月30日金曜日

芝居 『静かな落日』

先日、劇団民芸の『静かな落日』という芝居を観た。作家広津和郎(伊藤孝雄)が、ふとしたことがきっかけで、社会正義のために、あの有名な松川事件(1949817日福島県松川を襲った列車転覆大事件)の冤罪と取り組んでいく和郎を中心に、その父広津柳浪(安田正利)や妻松沢はま(仙北谷和子)別居している妻と住む娘広津桃子(樫山文枝)と、複雑な家庭環境、温かい友人等のあれこれを交えながら、広津家三代の、生き様を淡々と描いていく、という芝居である。

初めっから、滋賀直哉(松田史郎)だの、宇野浩二(小林勇二)だのと、懐かしい文士が出てくるので、引きつけられていったのだが、若い世代の観客は、ひょっとして、退屈な芝居であったかもしれない。何しろ、松川事件など、知らない人には、舞台の上で、事件の取調室(初めから罪をでっちあげていく)の場面だけでは、冤罪の恐ろしさは分かっても、事件そのものは理解しにくかったと思う。

それはそれとして、広津家のいろいろを演じる役者の、ちょっとした動作で観客の笑いをとることや、少ない動きの中でも、心の動きを演じ分ける役者さんに、さすがだなあと、感心。シニア演劇塾生として、色々と学ばせていただいた。

それにしても、このブログでも以前、映画で観た『布川事件』の冤罪映画のことを書いたが、再び冤罪の恐ろしさを観て、身の毛もよだつ思いであった。

徳島市民劇場の会員は、毎月2.200円の会費で、年5回の演劇を楽しむことが出来る。運営は大変らしいが、何とか続いているのは有難い。会員を増やしていくことが続けて行くことの基本なのだが、それも課題だろう。なかなか、簡単には増えていかないようだ。

音楽、演劇、芸術、その他文化というのは、生活の中で、贅沢の部類に入るのだろうか。
私はそうは思わない。文化という栄養が、心を育てていることは間違いない。
一見、役に立ちそうにない芸術や文学、いわゆる教養と言われているようなものを体験することによって、心の成長というか、家族愛、もののあわれ、郷土愛、祖国愛、人類愛、そして勇気、正義とあらゆる心の成長にかかわってくるものと信じている。

4 件のコメント:

  1. 何によらず表現するって難しいものなんでしょうね。たった、ひとつの言葉、体の動き、声の表情が真実を現すんでしょうから・・・
    考えてみれば恐ろしい事です。

    松川事件、若い人は知らないでしょうね。戦後の社会は若い人に伝わっていないと思います。

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    1. 戦後の社会も、世界第二次大戦も、知らない人がほとんどですよ。
      学校の歴史は、昔のことより、大切なことを教えていない。歴史の教科書を、逆さまから、現代から教えるほうがいいかもね。

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    2. 小説やエッセイは気持ちや人間関係などを文字で説明できるけど、演劇はそれを仕草、表情、声音などで表現しなければならないので、脚本を書くのも演技をするのも、とても難しいと思います。
       錚々たる役者さんたちの演技にきっと得るところ大
      だったことでしょう。

       食物は体の栄養、文化は心の栄養。偏らずに摂りたいのですが、どうも私は食い気に走って困ります。太鼓腹を撫でながら反省しきり。

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    3. お六さんの細い太鼓腹じゃあ、音も出ませんでしょう。せめて私くらいにならないと。ふふふっ。

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